ニューヨークの展示会 Shoppe Object と NY NOW を見てきました!

Shoppe Object

デザイン・ハイセンスなホーム&ギフト、消費財の展示会、Shoppe Objectが2月5日〜7日の3日間、ニューヨーク、マンハッタンのイーストリバー沿い、Pier36にて開催されました。

仮設テントを増設し、規模をさらに拡大

これまで多くの出展希望企業がウェイティングリストに名を連ねていたということもあり、初めて仮設テントによるパビリオンが増設されました。こちらのパビリオンは、ブースの壁が標準で10フィート(約3m)あり、各ブースの見栄えがよく、また入り口はこの仮設パビリオンの方に設置されたため、賑やかな印象でした。

仮設パビリオンからメインのパビリオンに抜けるところはホールとなりユニークな装飾がなされ、カフェカウンターが設置されていました。写真(上)はカフェカウンターに並ぶ来場者。

メインパビリオンの様子

イーストリバー寄りのメインパビリオンはホールの壁際に12フィート(約3.65m)の壁が標準となっているブースが少し、ほとんどは8フィート(約2.43m)の壁のブースが所狭しと並んでいます。

賑わうカフェラウンジ(写真下、2階)

Shoppe Object

Shoppe Objectは2018年8月にデビュー。創業者は長年のNY NOWの出展者であったAesthetic MovementのJesse James、そしてアパレルトレードショーのCapsuleの共同創業者であるBast & BellのDeirdre MaloneyとMinya Quirk。彼らは15年以上前にブッククラブで知り合い、キャリアやビジネスが成長していく間、そして子育てをしていく間に親しくなり、2018年、ロウアーイーストサイドでワインを飲みながら、彼らは家庭やギフト市場の進化とトレードショーの専門知識を組み合わせたシナリオを考え、Shoppe Objectが誕生したとのことです。

NY NOWはジャビッツ展示会場という州政府がほとんど保有する、言うなれば公営の展示会場で開催されていました。民主党の強いブルーステートでもあるニューヨークですから労働組合(Union Labor)も強く、壁にドリルで出展者自身が加工したり、脚立を使ったり、はたまた台車を使っても怒られるというとても出展者にとって不自由極まりないローカルルールがあります。そして、年々高騰する各種料金、NY NOW自体のスペース代も上がる一方なのに、出展者や来場者は減る一方。そんな折にShoppe Objectが誕生したわけです。

NY NOWはかつてAccent on Designという花形のコーナーがありました。展示会主催者がノミネートした評議員による審査があり、とても賑わっていましたが、現在のNY NOWはほぼこのコーナーからこぞってShoppe Objectに主要な出展者が移ってしまったこともあり(今回特にそれが顕著となりました)、寂しい限りです。Shoppe Objectはそんな元出展者が作った展示会であることから、NY NOWであったような不自由なローカルルールはかなり見直されています。主催者も「我々は長年の出展者の頭痛を解消することも一つの目的であった」と語っています。

以下筆者が感じた、出展者に取って優しいポイントを列挙します。

壁が標準装備されている

8フィート、10フィート、12フィートの高さの壁が最初から標準装備されています。テーブルだけの小さなスキームもあるようですが、ほとんどの出展者のブースにはそれだけでおしゃれなシンプルな白い壁が標準装備されています。ついでにカーペットも敷かれています。NY NOWでは高いお金をかけて、自ら壁を立てるか、あるいは主催者のパッケージを買うのですが、コストが高く、主催者が用意する壁はおしゃれとは程遠いものでした。

ライト(照明)も標準装備

Shoppeでは標準ブース上部にトラスが組まれ、ここにブースの広さに応じたライトが標準装備されています。足りなければオンサイトでも追加が可能なのも嬉しい。NY NOWでは展示会主催者ではなく、ジャビッツ展示会場に照明を注文するか(その分の電気容量も購入)、施工会社に委託して設置させる必要がありました。トラスを組むのはとても高く、パーカンライトを天井から釣ってもらうことが多かったのですが、これも高かった。もうShoppeのこのライトで十分だと思います。

Wifi完備

会場に行かれた方はトラスのところどころにルーターがあるのに気づいたかもしれません。そうです、出展者向けのWifiもしっかりと用意されています。NY NOWでは別途申し込まなければなりませんでしたがこれが高かった!というか筆者がニューヨークにきた頃はジャビッツ展示会場は携帯電話でさえ圏外であることが多かった(遠い目笑)。

労働組合の労働者(Union Labor)を気にしなくとも良い!

NY NOWでは禁止されているため、こっそり脚立を使ったり、こっそりドリルを使ったりしたものですが、そんなことを気にする必要はShoppeではありません。NY NOWではこういうことをしているとたまに怒鳴られたりしたものですが、Shoppeでは「どうぞ、どうぞ」と文字通り出展者の自由となっています。ま、それでもブースまで宅配便が届いたり、自家用車で乗り入れたりできる日本よりはまだまだいろんなルールやハードルがありますけど、NY NOWに比べればです。

レンタル備品の充実

備品も充実しています。白く塗られたラックや黒いメタルフレームに白い天板の棚など、シンプルで置くだけでおしゃれなレンタル備品が充実しています。NY NOWでは皆無でした。

会期が3日間!

これは良し悪しですが、NY NOWはかつて5日間ありまして(現在は4日間)、最後の方はほとんどバイヤーも来ないのに朝からブースに詰めないといけませんでした。3日間、短期決戦でいいですね。その分、ホテル代などコストも低く抑えられますよね。

Shoppe Objectのデメリット

ではShoppe Objectのデメリットはあるのでしょうか?以下ポイントをまとめてみます。

ある一定の世界観が必要

審査が厳しいです。無名な日本ブランドで、ソーシャルメディアがお粗末だったり、ルックブックやホームページが未整備だとまず落ちます。また、いくらおしゃれでもShoppeが目指しているような世界観に合わないいけません。

出たいが出られない出展者が多分たくさんいる

前ポイントとも通じますが、仮設テントができたと言えPier36の会場が限られていることや、主催者がある特定のカテゴリーが多くならないように配慮していることもあり、出たい人が全て出られるわけではありません。他方、まったく誰でもというと語弊がありますが、NY NOWの方はかなり門戸は開かれていると思います。

ちょっと行きにくい

ジャビッツ展示会場はタイムズスクエアから歩いて20分、最寄りのハドソンヤード駅まで地下鉄7番線でも行けるようになりましたし、かなりグランドセントラルを使う筆者にとっては便利な場所でした。Shoppeの会場であるPier36はNY NOWのジャビッツからも30分に1本はシャトルバスが出ていますが、なかなか不便なところにあります。まわりにレストランやホテルもそんなに多くないですしね。

NY NOW

さて、一方のNY NOWです。ほぼ同時期となる2月5−8日の4日間、ジャビッツ展示会場にて開催されました。

(写真上、かつては通路までブースがあり賑わったが見る影もない姿に)

筆者は前職の東京勤務時代、当時NY事務所の先輩に「すごい展示会がある!」と推薦され事業化を行い、2003年に初めてジャパン・パビリオンを設置したころから(当時はNY International Gift Fairと呼ばれていました)ご縁があります。その後、2008年に駐在員として赴任してから、2月、8月とジャパンパビリオンを組織して参加させていただき、2012年に起業してからもメーカーさんの代理店として幾度とブースを構え、出展しました。NYに来た当時は、ジャビッツ全ホールのみならず、チェルシーにあるイベントホールや、Pier42だったかの会場まで使用し、新規の出展者はPierにしか出られませんでした。ジャパンパビリオンの中も毎回エースとなるような人気ブースがあり、なかではオーダーを捌ききれず整理券まで配ったほどです。そんなNY NOWの特にこの上の写真を見て、寂しく思う人は多いのではないでしょうか?

もちろん、パンデミックの時、ジャビッツはコロナ病床、そしてワクチン接種会場だったわけですから、その当時に比べれば賑わいは戻っていると言えますが、当時を知るものとしては本当に一つの時代の終わりを感じると言えば大袈裟でしょうか。

NY NOWに言いたいこと

当然の報い

Shoppe Objectにアクセント・オン・デザインから多くの出展者をかっさられたこと、これは当然の報いだと思います。これまで出展者の利便や来場者に対する付加価値を上げていくことに本当に努力をしていたでしょうか?ブース代金だけは上がっていく。これでは展示会離れが進むのは無理もないことです。主催者としてぬるま湯に浸かっていたと言われても仕方ありません。

まずは出展者を取り戻せ

まだまだShoppeがNY NOWに会期をそろえてきているように、ある程度の存在感があるのは確かです。一方で出展者を取り戻せないと来場者はきません。来場者が来ないと出展者も集まりませんが、まずは出展者を是が非でも揃えることです。そのためには費用対効果、そう展示会としての付加価値を上げていくしかありません。

移転せよ、会期を考えよ

もうこれしかないかなと思います。筆者がNYに来てからも複数の展示会がNYを去りました。インターナショナルライセンシングショーはラスベガスに行きましたね。考えて見れば世界最大級のエレクトロニクスショーCESもニューヨークで始まったショーで同じくラスベガスに移転しました。ラスベガスはコンベンションや展示会を開催するインフラとしてはやはり群を抜いています。ニューヨークは魅力的な街ですが、あまりにもコストが高くなってしまいました。一方、世界に目を向ければ、ドイツにはフランクフルトメッセ、フランスにはメゾン、中国には広州交易会、日本にも東京ギフトショーがあります。世界最大の市場のアメリカのホーム・ギフト業界最大の展示会がNY NOWですが、あまりにも世界の競合見本市と比べて小さくなってしまいました。というか、ジリ貧なのに、今年はフランクフルトメッセの日程にピッタリ合っていました。なぜ合わせますかね。ちなみにフランクフルトメッセには日本からだけでも50社は出ていますよ(コロナ前は100社!)。アメリカからも少なからず有力バイヤーが行くはず。さすがにそこは避けるべきでしょう。

と、すいません。ついつい書いてしまいました。話を戻します。

 

展示会に出るべきかどうか?

ECがここまで発達し、明らかに市場が変わってしまったこの21世紀、パンデミック後にあって、展示会に今も出る必要があるのでしょうか?私は、ある種の方々にはまだまだ必要だと思っています。

B to Bのすすめ

日本にいながらにして、米国市場への進出を実現するには、①越境EC、②アマゾンなどプラットフォームの活用、③パートナー(ディストリビューターや代理店)、④直接小売店に輸出する、⑤現地法人を設立して進出、しかありません。⑤はかなりの投資が必要となります(これはまた書きたいと思います)。

日本からの越境ECは世界中に売れるというメリットがありますが、一つ一つの商品を発送した上で、消費者、日本の事業者ともに割に合うものでないと実際は厳しい。アマゾンなどのプラットフォームもありますが、無名の日本ブランドの商品がアマゾンで売れるようになるにはそれこそ大変な努力が必要となります。

③の活用もありますが、何も縁も知識のない段階で、誰をパートナーとすべきなのか。。そんな時にやはりとっかかりとしての展示会出展はその市場に初めて参入するような場合はやはりまだまだ有効な手段と言えます。

①の越境ECや、②のアマゾンの場合も、出荷や広報、広告、プロモーション、カスタマーサポートなど全て自社で行う必要がありますが、BtoBで例えばお店、小売店に卸販売した場合は、お店がこれらを全て担ってくれるわけですから、日本にいながらにしてある程度のビジネスまで持っていくことは可能だと筆者は考えますし、現にそういう事例は見て来ました。

また、ディストリビューターや代理店を見つけるという意味でも、展示会で「御社の商品を扱いたい」というような業者との出会いになる可能性もあります。なので、筆者としては、①日本にしか拠点なし、②これからアメリカ市場に進出でパートナーもなし、という場合は、BtoBから始めるのをお勧めすることが多いのは、こういった理由からです。弊社も今では展示会に出たり出なかったりですが、最初は常にメーカーさんとともに展示会に出て、さまざまな取引先を獲得して来ました。今の取引先の多くはそうやって得たお客様であることは事実です。

Shoppe ObjectとNY NOWのどちらに出るべきか?

Shoppeに出ることのできる人はもはやShoppe一択で良いと思います。残念ながら審査に落ちるなどShoppeに参加できそうにない方はNY NOWも候補になるでしょう。このいずれの場合も、かならず事前に一度は視察をされることをお勧めします。競合するブランドがどんな展示をしているのか。展示会の雰囲気や米国市場のトレンド、価格帯などをしっかりと調査された上で、展示会に臨んで欲しいと思います。潜在顧客である店舗も見て回って欲しい。よく、展示会出展自体がテストマーケティングということがありますが、これは大きな会社さんで余裕がある場合はそれも良いかもしれませんが、バイヤーからしてみれば、買い付けに来ているわけですから、価格も決まっていないようなブースを訪問すると、残念を通り越して苛立ちさえ与えかねないということを肝に命じていただきたいです。バイヤーはいろんなブースを見て周りますので、準備不足のブースに立ち寄ればすぐにわかってしまいます。

なお、今回初めてNY NOWの会場で「あ、YouTubeの方ですよね!」と声を掛けられました。そのブースでお声がけいただいたお二人は、ShoppeとNY NOWどっちに出ようか迷っていて、情報もあまりなく、筆者のYouTubeを何度もご覧になったということでした。前回の8月の様子ですが、実際に展示会を見たことのない方には参考になるようですので、よければ下記のYouTube映像ご覧ください。

今後について

Shoppe は買収された先(すでにバイアウトしている!これがアメリカのスピードですよね)の関係もあり、10月には家具のショーでも名高いHigh Pointにも進出するようですので、これまた注目ですが、次回のShoppe Objectのニューヨーク開催は8月です。NY NOWもサンフランシスコでも開催するなど、新しい市場を獲得すべく次の手を打っていますが、なんといっても本丸、ニューヨークのショーが今後復活できるかが鍵でしょう。厳しいことも書きましたがNY NOWにはもっと頑張って欲しいし、Shoppeともに切磋琢磨しながら大いに業界を盛り上げて欲しい。そんな気持ちでいっぱいです。

ということで、ニューヨークからレポートさせていただきました。この記事に関するコメントやご質問のほか、弊社では、展示会にまつわるサポートや、米国進出に際してのマーケティングのサポートなども行っていますので、お気軽にお問い合わせください。また、弊社の卸売りルートに乗せたい、弊社ECサイトで販売して欲しいという声も大歓迎です。またよろしければYouTubeもぜひチャンネル登録をよろしくお願いします。

 

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